契約書作成にあたっての一般的留意事項

民法の一般原則では契約は合意のみによって成立することになっていますが,契約書等の書面作成が効力発生要件になっている場合もあります。特別法によって書面の作成・交付が義務付けられていたり,登記その他の各種許認可登録申請への添付書類・確認資料として必要になったりする場合もあります。

 

民法に明文の規定はありませんが,その根底には「私的自治の原則」(本来,自由・平等である個々人を拘束し,法律関係を成り立たせているのは,まさに個々人それぞれの意思であるとする考え)があります。

この私的自治の原則の一つの現れとして,「契約自由の原則」という考え方があります。

契約自由の原則は,以下のような内容からなります。

(1)締結の自由 ・・・ 契約するかどうか

(2)相手方選択の自由 ・・・誰と契約するか

(3)内容の自由 ・・・ どのような契約をするか

(4)方式の自由 ・・・ どのような方式で契約するか

ところが,この契約の自由は,それをそのまま貫徹すると様々な弊害をもたらすため,現代においては修正が施されています。

・・など,特別法は多岐に渡ります 契約書(書面)作成との関係では,以下のような修正の存在に留意する必要があります。

近時,民法それ自体が修正を受けた部分もあります。

保証契約(連帯保証を含む)は,書面をもってしなければ効力が生じないこととされました。

契約書は作るべきか 〜 状況や場面に応じた作成を

契約書の作成にあたっては,そもそも作成すべきかどうか悩む場合もあります。

堅苦しいので作成しない,といった当事者間の事情もあることでしょう。

しかし,前述のように当事者の意思如何に関わらず作成や交付が求められる場合もありますので,どのような法律関係の形成を目指すのか・いかなる法規制に服することになるのかについても,充分検討する必要があるでしょう。

また,契約の効力に影響しなくても,後日,契約が存在することを証明する場面に遭遇することもあります。

例えば,公的機関に許認可や登録の申請をする場合,場所的要件(本店事務所の使用権限が存在することなど)を求められることがあります。

必要となってから作成することもできなくはありませんが,いざ押印や署名をもらおうとした時に当事者が遠方にいるとか,「そういう内容ではなかった」などと当事者の意思の食い違いが露になるトラブルが生じないとも限りません。

さらに,契約成立後,不幸にして契約が守られなかった場合,裁判所に対して訴えを提起し強制的に契約の内容を実現(代金回収など)をすることとなるかもしれません。

勝訴判決を勝ち取るためには,原則として債権の存在(契約の成立)そのものを証明する必要があります。

口約束だけであった契約の成立を後から証明すること,不可能ではないにしろ,高度な訴訟技術が必要であるなど,非常に困難を伴います。

契約書作成に馴染みがないのは国民性が理由の一つかもしれません。

また,欧米のような契約社会は,我々にとっては行き過ぎと映る部分もあることも確かです。

契約書が持つ効能や意義に鑑みると,然るべき場面においては,躊躇することなく,適切な内容の契約書を作成していく姿勢が大切かもしれません。

  2 ≫