減資手続における債権者への催告の仕方は(知れている債権者への個別催告書)

株式会社が資本金の額を減少(減資)するには、債権者保護手続が必要です。

商号の変更や本店移転のように、株主総会で必要事項(資本金を減少させる)を決議をして、ハイ、あとは法務局で登記申請、というわけにはいきません。

会社の債権者に対しては、異議を述べる機会を与えるために、公告や個別の催告などが必要になってきます。

具体的にどのような方法をとるかは、会社が「公告の方法」としてどのような方法を採用・登記しているかにもよって異なってくるのですが、今回は「知れている債権者への個別催告」の書面をご紹介します。

なお、よく「知れている債権者」とは、誰を指すのか、というご質問をお受けすることがあります。

これは,要するに資本金を減少しようとしている会社が把握している債権者をいいます。

たとえば,会社が借り入れをしている金融機関(銀行など)や、掛けで取引をしている仕入先などが代表的です。

もちろん、会社に個人貸付をしている役員も、ここにいう「知れている債権者」にあたるといえます。(※注)

催告をしたのち、これらの方々からの異議があれば、弁済や担保の提供など、所定の対応をしたのち、それらを証する書面を作成して登記所に提出します。

特に異議が出なかったのであれば、法務局へ出す申請書には、異議を申し出た債権者はいない旨を記載することになります。

(※注)
このほかに、次のような人たちも「知れている債権者」に該当するといえるでしょう。(1)法人名義でETCカードを作って利用している場合にはそのカード会社、(2)事務所や駐車場を法人名義で借りているなら家主さん、(3)電気・水道や電話・インターネットなどの契約を法人名義で結んでいるなら電力会社・水道局・電話会社など、(4)継続的な顧問契約を結んでいるなら弁護士・税理士・社会保険労務士など。なお、形式的にこれらに該当するとしても軽微な金額であれば催告は不要とする見解もあります。


催  告  書

拝啓 時下益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 さて、当社は、平成22年4月30日開催の株主総会において、資本金の額金1,000万円を金700万円減少して金300万円とすることを決議いたしました。

 つきましては、これに対する異議がございましたら、本書面到達より1カ月以内に、当社までその旨を書面にてお申し出下さいますよう、会社法第449条第2項の規定に基づき催告いたします。

 なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。

掲 載 紙
官   報
掲載の日付
平成22年5月6日
掲 載 頁
32頁(号外第142号)
敬具
        
平成22年5月10日

        札幌市北区屯田7条2丁目8番20号
         MORIタワービルヂング65階

            株式会社 MORI産業
              代表取締役 毛家 樽(代表者印)

【参考図書】

減資の手続や書式を知りたいのであれば、日本法令の「株式会社の減資と登記手続」や「商業登記の手続」で間に合うでしょう。加除式に比べて価格もお手頃なので、参考書籍として利用している実務家も多いようです。

商事法務の「商業登記ハンドブック」は、商業登記全般に関する書籍ですが、商業登記に関する基礎的知識があれば十分に読みこなせると思います。実務家であれば、是非手元に置いておきたい書籍の一つだと思います。

きっちり読みこなすにはやや専門的な知識が必要ですが、税務についてもしっかり確認しながら手続を進めたいのであれば、次のような書籍も参考になるのではないでしょうか。


[お断り]本稿は、運営者個人が運営していたBlog(本サイトとは別サイト)内でご紹介していた記事を、若干補筆して掲載したものです。