株式会社が資本金を減少(減資)するには、債権者保護手続をとることになっています。
減資の手順は会社法に定められていて、大まかには次のような流れで進めます。
債権者保護手続にはいくつかバリエーションがあるのですが、(a)官報公告+(b)債権者への催告が基本形です。
官報公告というのは、資本金の減少をする旨を、官報に掲載することです。最寄りの官報販売所を通じて掲載を依頼します。当然、所定の料金がかかります。
債権者への催告というのは、会社が把握している債権者(「知れている債権者」)に対して、個別に催告をすることです。会社の資本金の減少について異議があれば、所定の期間内に申し出てくださいという旨を知らせるものです。官報への掲載料金のようなものはかかりませんが、通知に要する費用等は会社の負担です。
注意を要するのは、(a)には会社法上、一定の決まりがあることです。
一か月を下らない一定の期間を定めて公告しなければならないことになっているため、結局、次のステップに移るまでに最低一か月は待たないといけないことになります。
なお、保護手続は、会社がどのような公告方法を採用しているかによって、上記の基本形とは異なる方法をとることもできます(※1)(※2)。
※1 公告方法を定めるのは定款です。もし定めた場合には登記事項になります。
※2 公告方法を特に定めていないときは、官報に掲載する方法をとっている会社として扱われます。
債権者保護手続の方法
減少しようとする会社が定めている公告方法の如何によって、次のような手続パターン(1〜3)があります。
1 「官報に掲載してする」という定め方の場合(公告方法の定めのない場合も含む)
→ この場合は、官報公告+個別の催告(原則形態)になります。
2 「○○○○新聞に掲載してする」というように、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙を指定しているとき
→ この場合は、1の個別催告に代えて、日刊新聞紙への掲載方法をとることができます。
つまり、公告方法がこのタイプの会社がとれる方法は、次の@Aのいずれかになります。
@ 官報公告+個別催告
A 官報公告+日刊新聞紙掲載(定款所定の方法)
3 電子公告を採用しているとき
このタイプの会社は、公告を掲載するウェブページのアドレスを登記して公示しているわけですが、このウェブへの掲載をもって、1の個別催告に代えることができます。
この場合には、次の@Aのいずれかの方法で債権者保護手続を行います。
@ 官報公告+個別催告
A 官報公告+電子公告(定款所定の方法)
なお、3でいう「電子公告」ができる会社は、決算公告のみを電子公告することにしている会社は除かれるので要注意です。
個別の催告は、知れている債権者がいないときは行いようがありませんが、銀行など、会社それ自体が債務を負っている取引先があるのが一般です。
これらの債権者にどのような内容の催告をいつ送ったか、という書類が、減資手続に必要になってきます。
ちなみに、法定公告の内容を紹介すると、次のようになります。
資本金の額の減少公告 当会社は、資本金を400万円減少し、金100万円とすることにいたしました。 効力発生日は、平成21年9月7日であり、株主総会の決議は平成21年7月25日に終了しております。 この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から1箇月以内にお申し出ください。 なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。 掲 載 紙 官 報 掲載の日付 平成21年6月25日 掲 載 頁 132頁(号外第○○○○号) 平成21年7月28日 ……(会社名、代表者名)省略 |
減資しようとする会社が特例有限会社のときは、毎年度の決算公告義務がありませんので、手続きは比較的スムーズに進められると思います。(上記赤字の部分は、記載方法が変わります)
会社法では、前記のような債権者保護手続をとるべきことが、割といろいろな場面で要求されています。
基本はどれもほぼ同じといってよいかと思いますが、 (会社法上の通常の)株式会社で、法定の決算公告を失念している会社は、面倒なことになりますので、早めに対処しておかれた方がよいと思います。
なお、資本金の額を減少する決議の議事録記載例は、以下のとおりです。
臨時株主総会議事録 (中 略) 議案 資本金の額の減少に関する件 (中 略) 議長は、資本金500万円のうち金400万円を減少して金100万円としたい旨を述べ、以下の事項につきその承認を求めたところ、満場異議なくこれを承認可決した。 記 1 減少する資本金の額 金400万円 2 資本金の額の減少の効力発生日 平成21年9月7日
(日付・出席取締役による記名押印 省略) |
[お断り]本稿は、運営者個人が運営していたBlog(本サイトとは別サイト)内でご紹介していた記事を、若干補筆して掲載したものです。