内容証明郵便とは

内容証明郵便(以下,内容証明と略します)は,それ自体は通常の郵便物と変わりありません。

文書の内容や差出日などを,郵便認証司に公に証明してもらえるというものですが,法的な主張をする場合に有効であることが多いといわれています。

※内容証明では,配達されたかどうかまでは証明してもらえません。相手に確実に届いたかどうかの証明が欲しいときには,配達証明をつけてもらいます。

どのように使うか 〜 使う場面を間違えないようにします

内容証明は,主に次のような目的で用いられます。

(1)消滅時効を中断させたい場合

(2)債権譲渡の通知(確定日付ある通知)をする場合

(3)債務者に対して,債務の履行を迫る場合

(4)相手の主張に対して,裁判外で反論を述べる場合

(5)紛争の相手の出方をうかがう場合

契約の解除(クーリング・オフなど)・時効の援用・新たな証拠の作出・・など,あげればまだありそうですが,あくまでも中身は普通の郵便です。

ただ,内容証明は,文書の存在だけでなく,送達・内容までが公に証明されるため,のちのち、重要な証拠になりうるわけです。

普通の郵便ではなく,内容証明を受け取った側としては,差出人の強い(時には威嚇的な)意思を感じることが多いでしょう。

その意味で,内容証明を使うというのは,言うなれば喧嘩を吹っかける行為でもあるわけです。(「相手に内容証明をぶつける」という表現もあるくらいです)

内容証明を使って何らかのアクションを起こそうという場合には,内容証明の持つこうした性格を意識して,文案(論調・言葉遣い)・差出時期等を考えていくべきでしょう。

注意すべきことは

普通の郵便と変わらないといえ,どのような目的で使うのかによって,文体・内容・差出時期等,注意すべき点は異なります。

目的に応じて,必要な事項が過不足なく盛り込まれているのが理想です。

クーリング・オフによって契約を解除する場合には,最低限必要な事項が盛り込まれていれば,法的根拠(・・法の第○○条に基づき・・)などを述べることは不要です。

この場合はむしろ,差出時期に留意することになります。(※法定の期間制限に服する場合ですが)

いくら相手の態度・主張に腹立たしさを感じても,感情の赴くままに書きなぐったような文面では,かえって逆効果のこともあります。

強い態度で債務の履行を迫るつもりが,単に怒りを吐き出すだけの内容となってしまうと,内容証明を受け取った相手によっては,かえってしらけてしまうことがあります。

「書きすぎ」は特に注意すべきです。債務者が滔滔と自己の正当性を述べ立てたものの,勇み足をしてうっかり債務の承認をしてしまうこともありえます。手のつけられない紛争に発展してしまってからでは,証拠が残ってしまっている以上,不利な立場に立たされる可能性もあります。(※ただし,これは逆の立場からは,相手から反論を引き出して,新たな証拠作りをするという戦略にもなりえますが)

最も注意すべきなのは,法的な根拠の不明確な内容証明ではないかと思います。

根拠となる法令名や条文ナンバーを引用するかどうかはさておき,およそ認められない主張を述べ立てたところで,いたずらに時間や労力を費やしてしまうだけ,ということになりかねません。

受け取った場合の対処も気をつけるべきです。

相手から内容証明が届いた場合,ケースによっては無視して放っておいた方が無難なこともあります。

仮に反論などを述べるにしても,電話や普通郵便という手段でも十分目的を果たせることが考えられます。

内容証明郵便は一つの手段に過ぎないのだ,ということに気をつけて,事案に応じた効果的な利用をすべきだと思います。