遺言の作成

ご自身の亡き後のことを考え、何かメッセージをのこしておこうと考える方もいらっしゃることでしょう。

単なる希望にすぎないなら、手紙のような形で自由に書いても全く構いません。最近ではいわゆるエンディング・ノートを残しておく方もいらっしゃるようですね。

でも、これらの方法は、法的な強制力はありません。かえって、自分のメッセージののこしかたが悪かったために、遺族の方々が遺産などを巡って揉めるような事態は避けたいものです。

そこで、法的な効力のある遺言という文書でのこすのがベストであるということになるのですね。

ところが、法律的に効力のあるきちんとした遺言を作るには、多くの約束事があります。せっかく遺言のつもりで書いたのに、まったく法的に無効だったということのないよう、基礎的な事柄はぜひ知っておいたほうがよいと思います。

では、しっか有効な遺言は、どのようにして作ったらよいのでしょう。

以下では、法律で定めれられている遺言の種類や書き方の基本などを中心に、遺言という制度をおおまかに紹介してみたいと思います。

序説 〜 遺言(いごん)とは 

どのようにして遺言を作れば法的に有効となるかは、民法という法律の中に書かれています。

逆にいうと、民法が決めている約束事に従っていない「遺言」は、法律的に有効な遺言にならない、ということです(*1)。

そうはいっても、杓子定規な文章・内容にしなければならないということではありません。

法律によって決められているルールを外れなければ、自分の死後、遺産をどのように分けて欲しいのか、どうしてその分け方にしたいと思ったのかなどを、自由に書いて構わないのです。

たとえば、「私の死後も兄弟仲良くやって欲しい」といった希望もあることでしょう。ある特定の遺産を特定の相続人に与えたい場合など、生前は胸の中にしまっておいたけれども、遺言の中で経緯や理由などを伝えておきたいと考えることもあると思います。

ここで気をつけなくてはいけないことは、民法の決まりに沿っていれば生前の”思い”を何でも自由に書きつづってよいわけではないことです。

たとえば、「長男に○○を分け与えるので、その代わりに、老後の母さんの面倒をみて欲しい」などというあいまいな表現は、かえってトラブルを引き起こす原因になりかねません(*2)。

もし今自分が亡くなったとしたら、その時点で相続できる人(推定相続人)と、将来、実際に自分が亡くなったときに相続人となる人が同一人物とは限らないことなども、注意しておくべきでしょう(*3)。


*1 専門的には、遺言は要式行為(一定の形式を備えていなければ法的効力が認められないもの)である、と説明されます。

*2 たとえば、(1)相続を放棄すれば「面倒をみ」る義務を負わなくてよいのか、(2)将来高額の医療費がかかったときでも、長男がすべて負担の義務を負うのか、(3)認知症の症状が出たときに施設に預け入れることは、長男が「面倒をみ」たといえるのか、など、日常用語では意味が通じる当りまえの言葉だと思っても、遺言の中では漠然・不明確な文言になってしまうことが少なくありません。

*3 たとえば、将来相続人となるはずだった子Cが、親である自分Aよりも先に亡くなり、遺言を遺した当時とは相続人の構成が変化する場合などです。この場合、Cに子DがいればDが相続人となりますが(代襲相続)、このDも既に他界しており他にDに子がなく、Aの親Eがまだ生きていれば、Eが相続人となります。さらに、Eは他界しており、生きている親族がAの兄弟姉妹Fだけだとなれば、Fが相続人となります。また、C・D・E・FがAよりも先に他界しており、Fには子Gがいて、FがAよりも先に亡くなっていればGが相続することになりますが(代襲相続)、このGがAよりも先に亡くなっていたとしても、Gの子Hが代襲相続することはありません。なお、Aに配偶者がいるときには、C〜Hのいずれが相続人となるかに関わらず、常にそれらの者とともに相続人となります。

 

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